プリ響 編曲解説 – いつか帰るところ

1月25日、FF9ファンによる有志オーケストラ「プリマビスタ交響楽団」のコンサートが開催されました。
諸事情あって私は公表していなかったのですが、実は「いつか帰るところ」と「Vamo’ alla Flamenco~スタイナーのテーマ」のアレンジで参加していました。
遠方在住のため残念ながら本番を聴けず、ツイッターのタイムラインを見て想像するぐらいしかできないのですが、満員御礼・大好評のようですのでとても安心しています。
聴きに来てくださった皆さんを始め、指揮の後藤さん、演奏者の皆さん、運営チームの皆さん、アレンジャーの皆さんに心からお礼を申し上げます。また、本当にお疲れ様でした。

こんな前置きはともかく、無粋とは知りつつもせっかくですので私の担当曲について解説したいと思います。なるべく専門用語は使わないようにしますので、ご興味のある方はお付き合いください。
1回目は「いつか帰るところ」について。
なお、上にも書きましたように私は本番を聴けていませんので、この記事はだいたい私のスコア通りに演奏されたのならという仮定の元に書かれています。ご了承ください。

いつか帰るところ

まず、この曲に対する私のイメージはシェイクスピアでした。
そこで、ルネッサンス期イギリスの演劇公演の素朴な雰囲気を表現するため、また、私を含めてこの曲に強い思い入れをお持ちの方たちのことを考えますとあまり下手にいじりたくはなかったため、原曲重視の素直なアレンジにしました。どうせ他のアレンジャーもこの曲を入れてくるだろうし、意外性はそちらに任せた! という感じです。
また、曲のイメージとは別に「楽器の自己紹介」というコンセプトを設けました。まあなんといってもコンサートのトップバッターですから、たとえお約束と言われてもご挨拶はきちんとしておかなくてはいけないですよね。
※海外版FF9では、実際にシェイクスピアからの引用が数多くあるようです。ローカライズスタッフとは気が合いそうだ。

1コーラス目は、ソプラノとアルト2本ずつ、計4本のリコーダーで余計なことを一切せずに原曲を再現しています。一応小学校で習うとはいえ、リコーダーはけっこう難しい楽器ですので、演奏者の方々はかなり緊張したのではないでしょうか(笑)

リコーダーの演奏が終わり2コーラス目、ハープの独奏が始まります。この曲はリコーダーのイメージが強すぎるので皆さんにとってはちょっと意外だったかもしれませんが、ハープはこういうシンプルなメロディを弾かせてもマッチするんですよ。今思えば女性ボーカルとかカウンターテナーでハープと一緒に歌わせてもよかったかもしれないですね。

ハープのAメロの後に弦楽隊が加わりA’メロ(実質Bメロ)を鳴らしますが室内楽的な構成とし、ここではまだ盛り上げず、弦楽器ならではの和音の美しさを楽しんでいただこうという狙いです。

お次はD調からF調に転じて、木管隊がA~A'(B)メロを鳴らし始めます。メロディを務めるのはオーボエ、そしてフルート。儚くも美しいビブラートが印象的な楽器を使いました。
ところでこの転調、一つは聴衆の注意を再度引きつけ直すという音楽としては基本的な狙いの他に、木管が映える音域で鳴らせるようにという意図があります。そもそも管楽器は息を吹き込んで音を演奏するものですから、高音域を小さな音で鳴らしたり、その逆に低音域を大きな音で鳴らすことはとても難しいのです。
そんなわけで音楽的・物理的な理由からそのようにしたわけですが、あまりにも自然かつ美しい転調なので、この部分で軽く見積もって2、3人ほどは鼻血を出して倒れた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、ここまで来たところで、ようやく私の大好きな金管隊と弦楽隊が加わり、朗々とサビを鳴らして盛り上げます。各楽器をダイナミックに動かしてオーケストラの醍醐味を存分に味わっていただけるようなアレンジですね。滑らかな第1ヴァイオリンのメロディはもちろんですが、実際にコンサートを聴かれた方は、特に高いポジションで頑張っているホルン隊をぜひとも褒めてあげてください。彼らはこの盛り上がりの要とも言える重要なパートですから。

最後はハープがさらりとお約束のプレリュードを弾いて静かに終わります。ありがとうハーピストさん。

以上、長文で恐縮ですが、いかがでしょうか。少しでも「あ、島岡って割といろいろ考えて曲作ってるんだな」と思っていただけたら嬉しいです。

あなたにとっての「いつか帰るところ」は、どこでしょうか?

次回は問題作(笑)の、「Vamo’ alla Flamenco~スタイナーのテーマ」について解説します。

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