去る10月11日(金)、東京はかつしかシンフォニーヒルズで行われた「日本BGMフィルハーモニー管弦楽団」の旗揚げコンサートに行ってまいりました。
ツイッターなんかでも告知しておりましたが、私は表題楽曲のアレンジャーとしてコンサートに参加しておりまして、この日を心待ちにしていたのです。
そのため、抗ガン剤治療のスケジュールなんかもバッチリ調整し、福井から1泊2日の強行軍ながら無事に聴いてくることができました。
当日のプログラムなんかはいろいろな方がブログなどに書いてくださっているのでここでは割愛し、アレンジャーならではの編曲解説をさせていただきたいと思います。
■パズル&ドラゴンズメドレー
・Departure:
ノーマルダンジョンのBGMで、原曲は爽やかな四つ打ちダンスチューンです。
何はともあれ1曲目ですので、派手な音で鳴らしながらオーケストラの醍醐味を存分に味わえる編曲にしようと思っていました。
ということで、バイオリン、木管、金管がときには入れ替わり立ち代わり、ときにはユニゾンで、滑らかにメロディを紡いでいくことを心がけました。伴奏部隊はバイオリンとビオラの厚い和音でリズムを刻み、コントラバスのピチカートで原曲の四つ打ちを再現しました。また、全体を通してタンバリンの16ビートで駆け抜けるようなスピード感を表現しています。
・Walking Thorough The Towers:
ノーマルボス戦のBGMで、原曲は全編メロディをシンセリードが鳴らすハードロックです。
この曲はタムがドンドコと細かいリズムを刻んでいますので、横に横に流れていくイメージが強いのですが、オケの打楽器ではなかなか再現しにくい要素でした。で、あえてズン!ズン!ズン!とお腹に響く縦ノリに編曲しました。まあ、私のお得意リズムですねw
また、バトル曲ですのでメロディは基本的に金管の勇壮なフォルテシモで、相の手としてバイオリンを混ぜながら変化を出していきました。
・A New Journey:
テクニカルダンジョンのBGMで、やはり爽やかでかわいらしいダンスチューンですね。
とはいえ2曲連続で派手な音が鳴っていましたので、中休み的なイメージで原曲よりも少しだけテンポを落とし、同時に鳴らす楽器の数も大幅に減らして、ややおとなしめのマーチに編曲しました。原曲ではピコピコシンセがおいしいところで鳴っているのですが、涙を飲んで切り捨てました。
・The Orb Festival:
テクニカルダンジョンのボス戦BGMで、原曲はテンション系のコード進行が素敵なロック。後半になればなるほどイトケンさんらしい展開になってきます。
この曲の編曲は正直かなり悩みました。というのは、トリにはみんな大好き「Dragon’s Den」が控えていますので、ここでイントロから入ってパワー全開で最後までやってしまうと息切れしてしまうのではないかと。そこで、オーブ祭ではイントロだけ残して前半をすっ飛ばし、一気にシンセとオルガンのソロパートに持っていくという荒業をやってしまいました。
しかしここでまた問題が。シンセソロは音的にバイオリンにやらせるのがふさわしかろうとすぐに判断できたのですが、問題はオルガンソロ。あの和音、ロータリー、そして音域をきちんと再現できる楽器がない。ではどうするか。結果的には、まあそれならそれで「いかにもオケらしいやり方」で表現しようと諦め決め、いろいろな楽器同士の掛け合いとしました。締めのトランペットとピッコロのユニゾンがきれいでしたね。自画自賛。
・Dragon’s Den:
みんな大好きDragon’s Den。期間限定バハムート戦のBGMで、原曲はメタル寄りのロックですね。
ただ、諸事情によりこの曲はイトケンさんご本人と羽田二十八さんという編曲家さんによって全編にわたり大幅に再構築していただきましたので、恐縮ながら解説は差し控え、印象を述べる程度に留めさせていただきます。
トランペットが大々的にフィーチャーされていました。これは恐らく「スーパーファミコン時代には、打ち込みではいい感じでエレキギターが鳴らなかったのでトランペットで代用した」というエピソードへのオマージュなんじゃないでしょうか。エロビブラート最高。
結果的に当時のイトケンさんのバトル曲といえばBマイナーでメロディはトランペットという印象が強いわけですが、それを見事に思い起こさせてくれる素晴らしいアレンジでした。
イトケンさん、羽田さん、本当にありがとうございました。次回は必ずリベンジさせていただきます。
■子午線の祀り
みんな大好き子午線。言わずと知れた聖剣伝説2のラスボスBGMで、本公演のアンコール曲のひとつです。
指揮の市原さんがMCでエピソードを紹介してくださいましたが、この曲は入院中に自宅のデスクトップマシンを病室に持ち込んでの編曲となりました。
楽曲の流れとしては、イントロの高速アルペジオに始まり、ほぼ原曲通りとなっています。また、オーケストレーションについては(以前から私の曲を聴いてくださっている方ならご存知かと思いますが)実は過去にも子午線をやったことがありまして、そちらがベースとなっています。いわば生オケ用改訂版です。いや当時のデータをコピペしたりなんしてませんよ? もちろんアンコール曲としてきちんと熱く熱く作り直しています。
さて、特に譲れなかったのがリズム隊で、スネアとタンバリンでドラムンベースを再現していただきました。どうせならバスドラもミュート気味に叩いてもらえばよかったかなと思っているぐらいで。
ちなみにイントロや中間部の高速アルペジオも、技術的にはかなり難しいながら物理的に演奏可能であることは分かっていましたので、原曲より若干テンポを落としながらも容赦なく入れさせていただきました。コンミスの小林明日香さんが奮起してくださって何よりです。
市原さんを始め日本BGMフィルの皆様、本当にありがとうございました。最高のコンサートでした。
以上、アレンジ解説でした。